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翻訳の倫理

June 8th, 2008 / Category: Media

スタンダールの『赤と黒』新訳(野崎歓訳,光文社)をめぐって論争が起きているらしい。

 「まるで誤訳博覧会」-。光文社古典新訳文庫から昨年刊行されたスタンダールの『赤と黒』について、誤訳が数百カ所にのぼり、全面的な改訳が必要だと批判する書評が、スタンダールを研究する専門家でつくる日本スタンダール研究会の会報に掲載された。MSN産経ニュース

これ自体は,よくある話ではある。僕の周りでも,ルーマンとかフーコーのひどい翻訳が問題になっていて,新訳を出したいけど版権の問題で出版できないんだそうな。だからなぜか僕がいまさらドイツ語の勉強とかしているわけで…。

でもまぁ,ルーマンとかフランス現代思想の翻訳で百歩譲れば仕方ないと思うんですよ。原書の言語に詳しくても,もとの文書がラリってたらそりゃ誤訳にもなるわ。言い換えると,原書の解釈が進んだから,「あれは誤訳だ」って後出しジャンケンもできるようになるってこと。

さて,今回の新訳『赤と黒』の問題は大きく2点。翻訳者の(マネジメントを含めた)能力と,編集者の職業倫理の問題だと思う。前者については,学生に下訳作らせておいて忙しいから原文も見ずに出しちゃった,ってことだと思う。文学の世界のことは全然知らないけど,多分『赤と黒』くらい有名な本なら学界で解釈が固まってるんだろうから,わざわざ読みの多様性を開くような脱構築(笑)はやらんでしょう。ま,憶測ですが。むしろそうでなかったら恐ろしい。

で,僕が一番気になったのは,むしろ後者。以下,出版元の光文社のいいわけ。

光文社文芸編集部の駒井稔編集長は「『赤と黒』につきましては、読者からの反応はほとんどすべてが好意的ですし、読みやすく瑞々しい新訳でスタンダールの魅力がわかったという喜びの声だけが届いております。当編集部としましては些末な誤訳論争に与(くみ)する気はまったくありません。もし野崎先生の訳に異論がおありなら、ご自分で新訳をなさったらいかがかというのが、正直な気持ちです」と文書でコメントした。MSN産経ニュース

ど・こ・が,「些末な誤訳論争」じゃ,このボケ! 些細な点でもチェックして直すのが編集者の仕事だろーが。フランス語が読めないとしても,「訳し忘れ、改行の無視、原文にない改行」(下川茂氏のコメント)くらい気づくでしょ。多分,担当編集者も受け取った原稿をそのままあとの工程に丸投げだったんろうな。そしてこの開き直りですよ。アホ編集者のことも省みず「うちはビジネスでやってて,違法なことはやってないし,学者の世界のことは知らんから勝手にやってくれ」ってこと? 読者の「喜びの声」に満足するだけなら,出版業って世界は(機能的に)いらん。それならリクルートみたいな「なんちゃって出版業」のほうがよほど上手くやると思う(ってか実際そうか)。
 
 
 
この駒井って編集長に鯖折りくらわせたい。

Comments

    今日はH氏の解釈に一票

    私も、文学が専門分野でない翻訳者が下訳を作成し、本に名前が載る翻訳者様が忙しいから訳を一切見ず(あるいはほとんど)、出版社の編集者は仏語が読めないので数字(0が一つ多いなど)など明らかなミス以外は見ていない、そして出版、という流れだと想像しています。
    翻訳者の方(下訳した方ではなく)も悪ければ、質を落としてでも費用を抑え、利益を上げようとする昨今の出版社も悪いと思います。

    >ななし様
    コメントありがとうございます。
    たしかに,人件費抑制→利益確保の結果,質の低下を招くという傾向はあるかもしれません。消費者としては,お世辞にも気分のいい風潮とはいえませんね。
    ただ,一応フォローしておきますと,出版社も慈善事業をやっているわけではないし,(業界全体として)コストを抑制しないと経営が回らない状況になってしまっている,というのも事実です。出版者勤務の知人から聞いた話では,紙媒体の現場はもうどこも火の車で,下手をすると出せる本も出せなくなる状況のようです。
    そうなると,事業戦略を見直せよ,ということになりますが,まぁこれはまた別の問題としてここでは置いておきます。
    また,書籍の内容に最終的に責任を負う主体というのが意外と曖昧で,編集者は筆者(ここでは翻訳者)に対して修正を要求する権利があるわけではないようなのです。言い換えると,編集者が全責任を負う義務があるわけでもない,と。
    それで,何が出版社の問題として残るかというと,翻訳者の選定に関するフィルタリングに関する倫理的責任と商品の問題に関する説明責任,ということになる気がします。思いつきではありますが,仮に商品の内容に関する責任を除外すると,そのくらいしか残らないな,と。しかし,逆に言えば,これこそが出版社/編集者がプロフェッショナルとしての価値を発揮すべきところなのかもしれません。

    当時とは少し認識が違うところがあるかもしれませんが,いただいたコメントに便乗して,2年前の投稿を振り返ってみました(;^ω^)

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Bespoke Shirt

June 2nd, 2008 / Category: Diary

2週間のごぶさたでした。とくに忙しいわけでもなく,お勉強しながらアウトプットの準備もちょぼちょぼやってます。

先週の土曜,近所の店でオーダーメイドのシャツを注文してきました。ちなみに,「オーダーメイド」というのは和製英語だそうで,イギリスでは “bespoke shirt” と呼ぶんだそうな。
んで,注文の流れはまず好みの生地を選んで,体のサイズを測られて,ディテールを話しながら詰めていくという手順。店主いわく「あんたは首が細くて手が長い。合うシャツは高島屋でも売ってないよ」とのこと。分かってはいたけど。オーダーメイドというとなにやら高そうだけど,2枚で1万円に足がでる程度ですむ。体に合わない既製品を高い金だして買うよりよほどお得感がある。カジュアルなものも作ってくれるので,今回注文した物で満足したらこの店だけで済みそうだなぁ。

Comments

    「高島屋」という発言になんか時代を感じます。(笑)
    腕のいい職人さんだといいね!
    ディテールとか自分で決められるとデザイナーになった気分だね。
    むしろ、もうデザイナーの領域だね。

    あとはセレクトショップ開業か…。

    >as
    どうもシャツだけじゃなくて,僕はもともと小物とかも全部自分でデザインしたいタイプらしい。モノは難しいけど,服くらいだったらやりやすいからね。

    >daf
    うん。そこまでいかなくても,バイヤーみたいな仕事は向いてるかも。

    開業したら、、、雇ってね?

    黒いのしか作れないかもよ(笑)

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